2012年10月17日水曜日

15th FAI World Glider Aerobatic Championship参戦報告


(これは、第15回世界滑空機曲技選手権への参加報告書を若干改変し、転載したものです。)

 本大会を迎えるにあたり私は、表彰台への登壇という目標を掲げました。前年において動力飛行機による訓練を取り入れたことによる一定以上の技量向上を受け、今年度も同様に飛行機と滑空機双方の垣根をこえた訓練を行なうことによる上達を目指しました。45月の一ヶ月半ほどイギリスに滞在し、Extra200を用いて30時間の飛行を行い、BAeA(イギリス曲技飛行協会)主催のアドバンスドレベルの大会「Duxford Trophies」に出場しました。結果として64.967%、5位の成績を収め、一定の訓練効果を確認しました。





その後、7月初日よりポーランドへ渡航しポーランドチームのトレーニングキャンプに参加、1ヶ月間で50発ほどの訓練飛行を行いました。この期間に出場したポーランド国内選手権では、総合で3位という成績となり、相応の手応えを感じることができました。
(ポーランド選手権でのフライト。83.3%、2位)

またこの選手権のアドバンスド部門には日本から酒井隆さん(写真右)が初めて参加され、健闘されました。これを布石とし、来年以降の世界選手権へと進んでいかれることを望んでいます。


世界選手権開催地のドブニツァ飛行場は、大きな格納庫、広いレストラン、待機室、広くて長い滑走路、そして人家の非常に少ない空域と、曲技飛行競技会にとって素晴らしい環境を有していました。連日好天に恵まれ、プログラム6まで終了させることができ、非常に充実した大会となりました。
しかし、選手権初日より引いてしまった風邪の影響で、ノウンとフリーにおいては思うような飛行ができず、9位、19位と成績を落としてしまいました。しかしアンノウンプログラムへと進むにつれ体調は回復し、アンノウン3では4位という好成績を収めました。総合では27人中10位(71,965%)という成績となり、優勝者の得点率とは5%ほどの開きが出てしまいました。


順位は昨年よりも一つ下がっていますが、得点率は1%ほど上がっており、また自身の感覚や諸外国の選手の反応からも、技量は顕著に向上していると思われました。しかし未だ、安定して表彰台へ登るトップパイロットとの技術差は大きく、今後さらなる訓練/投資が必要であることは明らかと思われます。


 今回の大会では初めて日本として正式なジャッジ、そしてアシスタントジャッジが認められ、活躍していただくことができました。これまで何年も前から鐘尾さんが活動されてきた結果がようやく実り、日本は諸外国に劣らないチームへと成長しつつあると感じます。

これからの課題は、選手を育成し、世界の舞台へ引き上げていくこと、これに尽きるでしょう。上記の通り今年度は酒井選手をポーランドへ招待することができました。来年以降、さらに複数名の選手を育成し、できることならばアンリミテッドの日本チームを作りたいと思います。選手同士が教えあい、その成果をジャッジに確認することによってこそ良いトレーニングが可能になります。日本がグライダーアクロの列強として世界と肩を並べる日はそう遠くないと感じています。



私個人としては、来年度イギリスでExtra 200を用いてアンリミテッドクラスの選手権に複数回出場し、その後再びグライダーアクロの世界大会へと臨む予定です。着実に技術を向上させ、その結果を大会で確実に発揮することだけを念頭におき、身体の健康面も考慮に入れた日常からの訓練を行っていきたいと考えています。



2012年6月4日月曜日

イギリスでの動力機訓練



今年度の動力機訓練はイギリスで行いました。短期的目標は、アドバンスドレベルの競技会へ出場すること。長期的な目標は、アンリミテッドへ移行するための布石とすること。

訓練はExtra200で行いました。パワーは少ないですが、なんとかアドバンスドを飛びこなすことができます。








頑張ればアンリミテッドの2012Knownも飛ぶことができました。かなり無理やりでしたので、競技会では0点をもらってしまうかもしれませんが(特にアップラインでのスナップ)、挑戦の価値はあると思います。


この飛行機は、Adrian Willis氏(下写真)が運営するスクール機ということに、一応なっています(http://www.adastralflying.com/)。とはいえ実際は、スクールというよりも、競技者から個人的にレンタルしているという趣で訓練することができます。とてもいい教官です。

飛行機の世界はグライダーよりも個人主義的な傾向が強く、なかなか上級機を貸してもらえる機会は少ないのが現状です。そのなかで、extra200を好き勝手に使わせてもらえて競技会にも出ることのできるこのような機会は、少なくともこの国ではなかなか得がたいものです。



イギリスの環境は素晴らしい。ちゃんと整備されてて動く飛行機、綺麗な飛行場、適当にそこらへんでどこでもアクロできる空域、そしてスタンダードの高い競技会。ただし、天候の悪さだけは考慮しなければいけないでしょう。基本、毎日曇りか雨です。あと、物価の高さ。

私が訓練したLittle Gransden飛行場は、世界的トップパイロットの一人であるMark Jefferies氏(http://markjefferiesairdisplays.com/)により所有されており、アクロ天国と化しています。数えるのもバカバカしくなるほどのアクロ機、気を使いさえすれば飛行場の真上でクリティークできる空域、そしてMark氏のような理想的なパイロットの身近にいられる環境・・・今まで見た中で、アクロ屋にとってもっとも理想的な飛行場でした。




一ヶ月のトレーニングの末(とはいえ雨ばかりで30時間ほどしか飛べなかったのですが)、Sleap飛行場行われたBaEA(イギリス曲技飛行協会)の競技会に出場しました。順位は9人中5位と、とりたてて特に主張のない位置に収まりました。アンノウンでしくじったこともあり、総合得点率は65%まで落ちてしまいました。コンテストディレクターによるレポートはこちらです(http://www.aerobatics.org.uk/results/2012/GoldingBarrett/CD%20Report%20and%20Results.htm)。The Duxford Trophyというのがアドバンスドにあたります。


この大会の2週間後、英国選手権に出場するために再度渡英したのですが、残念ながら天候のためキャンセルとなってしまいました。残念です。



代わりに、というわけではありませんが、マイクロライトに乗せてもらいました。エクストラに乗るときの純粋な戦闘的気分と比べると、まるで自転車のような軽さ/清々しさを感じます。




2012年4月1日日曜日

イギリスで曲技グライダー共同オーナー会が発足

良いニュースです。
イギリスでGlider Aerobatics Clubが発足しました。曲技グライダーの共同オーナー会です。

http://www.glideraerobaticsclub.com/

アンリミテッド曲技競技を正しく習うことができ、そして世界選手権へのルートが約束されている、おそらく現在世界で唯一のオフィシャルなクラブです。これがいかに素晴らしい環境か・・・一度でも世界で飛ぼうと考えた人なら容易に同意して頂けるでしょう。

ここに入会すれば、イギリス唯一のグライダー・アンリミテッド教官、Paul Conran氏から教習を受けることができます。そして、訓練機をそのまま大会開催地に運んで、Paul氏及びMazen氏(アンリミテッド曲技選手)の監督の元、世界選手権に出場できます。

そして注目すべきは安い価格設定!たった600ポンド(たぶん年間?よく読んでません)払えば、あとは曳航料だけで飛べる。曳航料はたぶん50ポンドくらいです。

このクラブ発足の背景は、やはり万国共通の人手不足です。一昨年のフィンランド大会以降、イギリス人選手が激減しました。選手が減少すれば、機体維持費の一人当たりの負担が大きくなる。去年の夏の段階で彼らは、機体(fox)を売るか、ギルドを作るか、選択を迫られていました。その結論が、このクラブです。イギリスだけでなく、世界の潜在的曲技競技者に向けて開かれたクラブです。今後の曲技界にとって、大変よい布石となると思います。

2012年3月5日月曜日

熊谷めぬまグライダーフェスタ2012

グライダーフェスタでのフライト、無事終了しました。
好天に恵まれ、最高の条件下でのフライトを見ていただくことができました。

(この記事に掲載する写真は全て、航空写真家の山さんに撮っていただいたものです。)

当日の飛行の原案となったシーケンスです。グライダーはパワーを持たない航空機であるため、計画通りに課目をこなすことがとても難しいです。なので、このシーケンスはあくまで原案であり、実際に行ったものとは異なります。計画からの逸脱を一つ一つ想定して、その対処を頭に叩き込んだ上で、フライトを行います。安全な低空飛行をする(あるいは「しない」決断をする)ためには、逸脱を想定した柔軟な計画を練ることが、とても重要です。


万全に整備していただき、確実に動作するスモークシステムを装着していただいた機体のおかげで、気持ちよく演技を行なうことができました。


最後の見せ場、ローパスからの変形インメルマンターンです。できるだけ早い速度(280キロくらい)でショーセンターに進入し、一気に引き起こしてそのままダウンウインドに入ります。





当日の様子、朝日新聞の埼玉版に掲載していただきました。


私はメインの活動が研究者であり、いわゆる社会性のある仕事に就いたことはないため、たくさんの人に心の底から喜んでもらったり、役に立つことをやったという経験があまりありません。曳航パイロットはみんなのためにやっているという実感はありましたが、今回のフライトはその感覚をはるかに凌駕するものでした。飛行を終えて観客の皆さんの元に向かっていくとき、とても不思議な感覚を覚えました。老若男女みんなが私のフライトを見て、掛け値なしに喜んでくれている。もしかしたら何人かの人生に大なり小なり影響を与えたかもしれません。

これまで何百万もかけて、技術練度を上げるための訓練を行ってきました。それは「曲技飛行競技」という価値基準の中で行なってきた努力です。その成果の一部をこのような形で評価していただき、本当に感無量です。凄かった、感動した・・・観客の皆さんから、いろいろなお言葉を頂きました。でも、おそらく一番感動したのは、飛んだ本人ではないかと思います。あんなにたくさんの人に喜んでもらったことなんて、今までになかったから。


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この飛行を通じて、アクロをやってみたい、飛んでみたい、と思ってくれた人との出会いがいくつかありました。学生さん、レーサーの方、会社勤めの方などいろんな人に興味をもっていただいたことは、空を愛するものとしてとても嬉しい出来事でした。みんなが自分に合った空の楽しみ方をできるようになれば、パフォーマンスをやった人間としてこれ以上に嬉しいことはありません。もちろん、競技者としてはアクロの後進をどんどん育成したいところです。

心残りなのが、名刺を忘れていってしまったため、何人かの方と連絡先の交換ができなかったことです。せっかくの機会、最大限に生かしたかったのですが。このブログを発見してくれることを祈ります。

2012年2月12日日曜日

岡南飛行場のエクストラ300L



岡南飛行場にはエクストラ300Lがあります。
所有者は、WP Competition Aerobatic Teamの内海さん

私がアクロをやりたいと思い立った大学2年の夏、「アクロバット飛行 始め方」などとググッていて最初に見つけたのが、内海さんのホームページでした。その当時はアメリカで飛ばれていた時であり、そのページには訓練の様子が面白おかしく記述してありました。その後、高木さんのホームページも発見し、アクロバット飛行競技の実態?を知りました。免許をとって、アクロスクールへ行けば始められるということを、この時知りました。

始め方がわかったとはいえ、当時は金がありません。正確に言えば、パイロットとしての金銭感覚(何日も働いて稼いだ金を一瞬で消費すること)を知りませんでした。当然、大金を叩いて楽しみのために海外へ行くなど、金持ち、ブルジョアのやることだと思っていました。しかしアクロは出来ないとしても、とりあえず飛びたい、そう思って近くのグライダークラブを探し、富士川滑空場へたどり着きました。


富士川で訓練を始め、毎週1万以上消費する金銭感覚にも慣れ、単独飛行も近づいたころ、内海さんが富士川に来られました。「アメリカでピッツに乗っていて・・・」「あ、あのホームページの人ですよね」・・・すぐにわかりました。狭い世界です。毎週のように飛行場で顔を合わせ、スーパーカブ(当時は曳航パイロットをされていた)に乗せてもらったり、地上でお話を聞いたりしながら、飛行機の魅力や外の世界の広さを知ることとなりました。


その後いろいろあって、私はグライダーアクロの競技者になり、内海さんはAWAC日本代表になりエクストラを導入されました。そして今、たま〜に岡南におじゃましては、エクストラに乗せていただいています


前席からの眺めです。キャノピーが広くてとても気分がいいです。昨年ピッツで訓練する前は、なんて前が見えない飛行機なんだ!と驚き呆れたものですが(だって着陸進入のとき滑走路が全く見えないんですよ!)、今では全く気にならなくなりました。何かが間違っている気がします。


フライトが終われば、ホワイトボードに情報を書きだして検討会です。最低高度をわることなく、かつ見栄えの良い課目の配置法を考えます。それぞれのフライトから、出来る限りの情報をしぼりとり、学びます。日本のような飛びにくい環境で、このような勉強の機会を与えて頂けたことに、感謝してもしきれません。

2012年2月3日金曜日

熊谷めぬまグライダーフェスタ2012

「市報くまがや」より転載

RedFoxⅡとして初めてのショーフライトを、表記のイベントにて実施させていただくことになりました。詳細は熊谷市のホームページ及び「市報くまがや」を御覧ください。
http://www.city.kumagaya.lg.jp/kanko/event/maturi/gliderfesta2012.html
http://www.city.kumagaya.lg.jp/about/shiho/heisei23/24_2.files/0109.pdf(PDFファイルが開きます)

「くまがやねっと」でも特集していただきました。
http://www.kumagayakan.net/sp/1202_01.html

当日が楽しみです。天気がよいと、いいですね!

2012年2月1日水曜日

写真展「曲技飛行」

先月より、札幌の定食屋兼アートスペース「おちゃ&めし オノベカ」さんの店内にて、写真展示をやらせてもらっています。
http://ais-p.jp/onobeka/blog/2011/12/519/

なかなかお店に行けなくて、お客さんの反応がわからないのですが、一人でも多くの方に空の魅力をお伝えできたらと思います。

2012年1月18日水曜日

グライダーエアロバティックチーム「RedFox Ⅱ」結成

グライダーエアロバティックチーム「RedFox Ⅱ」が結成されました。


今後エアショーを請け負っていく母体となる団体であり、また新人養成の拠点でもあります。現在も、数名のメンバーが板倉滑空場で訓練を行っています。

私は広報担当として、エアショーでのフライトやホームページの作成などを行っていきます。


3月3日に、第一回目のエアショーを予定しています。スケジュールが確定しましたら、またアナウンスさせていただきます。

(酒井さん、選手権に向けてノウン・シーケンスを訓練中。ちょっと後席に失礼して、写真を撮らせてもらいました)

以下は、私がアンノウン訓練として行ったフライトの動画です。やはり、何ヶ月も飛んでいないとあからさまに腕が落ちます。今年の選手権が心配です。